(株)アドバンテスト
自社の強みを「見える化」し、グローバル市場で優位性を伝える
グローバル市場における、日本企業の強みと市場変化への対応力。
株式会社アドバンテストは、海外売上比率が9割を超える半導体テスト装置のトップメーカー。極めて高い緻密さと正確で高速な処理を求められる半導体テスト装置は、組み込まれる電子基板も大型化・多層化する傾向にあり、製造には高い実装技術が要求される。アドバンテストでは、2年前からIPCスタンダードの活用を進め、様々な課題に対応し、グローバル市場で自社の優位性を確立することに成功している。
社名 | 株式会社アドバンテスト |
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創立 | 1954年 |
売上高(連結) | 約1,621億円 (2016年3月期実績) |
従業員数(連結) | 4,494名 (臨時雇用者、嘱託除く) |
事業内容 | 半導体・部品テストシステム事業、メカトロニクス関連事業、サービス他 |
「グローバル市場における、日本企業の強みと市場変化への対応力。国際標準IPCへの対応とそのメリット」と題して、グローバル市場の動向とIPCの取り組みについて、株式会社アドバンテストの塚越聡一常務執行役員兼生産本部長、齋藤登生産技術部長、伊藤秀樹生産技術部生産技術グループファンクショナルマネージャと、IPCジョン・ミッチェルプレジデント兼CEOによる対談が行われた。
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これまで構築してきたサプライチェーンだけでは、世界需要には対応できない。
世界市場の動向と、日本企業の強みと課題について
塚越氏「世界市場の変化について感じるところは3つあります。1つは、『二極化』。多品種と少品種、高難度製品と汎用品など、あらゆる場面で二極化することが多くなっています。2つ目は、『変動差の拡大』。例えば、新興国で市場が動くと、求められる生産のペースが一気に4~5倍になることがあります。3つ目は、力のある企業がM&A等により、さらに優位性を確保するようになる『寡占化』です。」
日本企業のグローバル市場での優位性は何か?という問いには、両氏とも、「品質」と「信頼性」だと強調する。一方でグローバル化が進み、全ての工程を自社だけでまかなうことが難しくなってきている。自社の優位性をいかにして世界に伝え、強固で柔軟なサプライチェーンを構築出来るかが日本企業に課せられた課題であろう。
ミッチェル氏「最近は、『コネクテッド』をキーワードに、グローバルでつながることが進んでいます。日本はエレクトロニクス産業のリーダーですが、これまでは歴史的に内向きであったため、その環境を変えていくのは大きなチャレンジになるでしょう。」
ベリジー社買収をきっかけに、サプライチェーンの再構築に取り組む
IPC導入で、企業はどう変わるか?
アドバンテストが、IPCを導入するきっかけとなったのは、ベリジーという、米Agilent
Tech-neologiesから分離独立した企業の買収だった。それまでは、全て内製だったが、ベリジーは、EMSを活用しており、二つの異なる生産形態が取り込まれる形となった。このような経緯により、国際標準の導入を推し進めた同社だが、既存の自社規格と比較・補完し合うことで、混乱なくスムーズに取り入れることができたという。
伊藤氏「元々持っていた社内基準とIPCとは、比較検討の結果、求められる品質は、ほぼ同等だと分かりました。当社のはんだ付け基準は、IPCのクラス2を問題なく満たせており、作業内容や品質に大きな影響もなかったので、それほど難しくありませんでした。逆に、今までやってきた自社基準が、IPCのどのクラスに相当し、自分たちの技術が、世界標準でどのくらいのレベルにあるか、どこにギャップがあるのかなど、『見える化』ができて良かったという声は多いです。普段は判断が難しく困った時にIPCを使っており、海外メーカーや仕入先とのやり取り、海外に出て行く際に同じ基準で話ができ、意思疎通がしやすくなりました。社内基準は、ざっくりとしていて、日本人相手には通じるのですが、海外ではなかなか理解してもえなかった。その点IPCでは、ひとつひとつの基準が写真や図などで詳しく書かれており、とても分かりやすかった。」
ミッチェル氏「日本企業の製造品質は高く、IPCを導入したとしても、工程を大きく変える必要はないでしょう。IPCを取り入れると、海外企業との取引機会が増加します。例えば、製品の品質を決める打合せの際に、『IPC-A-610のページ8-13に掲載されている加工だけは、当社指定の特別な方法で加工してください。それ以外はIPC-A-610のクラス2で進めてください。』という形で依頼すれば、相手先とスムーズで明確な意思疎通が図れます。」
その結果、アドバンテストは、従来有していた3つの強みに加え、グローバル市場において強力な優位性を持つことに成功した。
- 半導体試験に関する全ての装置をワンストップでソリューション提供できること。
- 高速域の測定技術を持っていること。
- 信頼性の高さ。
そして新たに加わったのが、社内で作る内製と、EMSを利用する外製の使い分けができるようになったこと。内製と外製のメリット・デメリットが明確になり、状況に応じて、最適な使い分けができるようになったという。IPCの導入によって、本来の強みをさらに補完し、海外企業との取引でも具体的にその内容を説明できるようになった。
その優位性をいかにして世界に伝えていくか
グローバル市場におけるIPC標準化プロセスの重要性とは?
塚越氏「実装の難易度が上がっていて、自社のはんだ付け技術、組立技術を確立しておかなければ、世界中で作ることができなくなり、グローバル需要に対応できなくなってきています。これからもIPCを活用し、世界各国で優れた技術者を増やしていきたいです。」
ミッチェル氏「IPCは、国と国の壁を取り払い、標準化により、小さな世界を実現したいと考えています。日本企業にIPCを理解してもらうことで、グローバルの市場で新しいビジネスが展開できるのです。」
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