IPC APEX 2024の最新情報を速報! 標準化委員会、技術論文発表、製品展示会など
2024年4月12日
IPC国際標準化会議およびApex2024開催レポート
この度、2024年4月6日(土)~11日(木)のあいだ、“What’s Next Becomes Now”(次の現実、次に現実になるもの)と銘打ち、エレクトロニクス業界における、北米最大のイベントであるIPC APEX EXPOが、アナハイム・コンベンションセンターにて開催された。カルフォルニア州・アナハイムでの開催は実に20年ぶりとなる。
会期中は好天に恵まれ、パンデミックの余波も感じられた2023年1月の前回大会と比べ、好調な客足であった。北米のみならず、南米やヨーロッパ、あるいは日本や中国、台湾、韓国といった東アジア各国からの参加者も目立ち、盛況のうちに6日間の会期を終えた。
会期中は好天に恵まれ、パンデミックの余波も感じられた2023年1月の前回大会と比べ、好調な客足であった。北米のみならず、南米やヨーロッパ、あるいは日本や中国、台湾、韓国といった東アジア各国からの参加者も目立ち、盛況のうちに6日間の会期を終えた。
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これまでに日本語に翻訳されている主要なIPC標準規格の無料版やトヨタ自動車、オムロン、アドバンテスト、GMなど各社がIPCを導入した理由や効果などの事例インタビューを入手可能です。
IPC Apex 概要
IPC APEX EXPO 2024
IPC最大の祭典であるIPC APEX EXPOは、エレクトロニクス業界関係者にとって世界クラスの製品展示会であると同時に、最新技術や専門性に磨きをかける学びの場でもあり、また、イベント参加者とのネットワーキングの絶好の機会ともなる。
本年の製品展示会は、元ウォルト・ディズニー・イマジニアリング社、ポール・ベイリー氏の開会講演『不可能を可能にする技術』を皮切りに、4月9日(火)より3日間開催されたが、規格開発のための対面会議は先立って6日(土)よりスタートしており、会期最終日となる11日(木)午後まで精力的に続けられた。
製品の展示会だけに留まらず、IPC標準化委員会やテクニカル・カンファレンスといった重要イベントの同時開催は、IPC APEX EXPOのユニークかつ最大の特徴と言え、世界中から参加者を惹きつけ、満足度の向上に大いに貢献している。
IPC APEX EXPO 2025は、“Reimagine the Possibilities”(可能性の再構築(仮))を掲げ、2025年3月15日(土)~20日(木)(※展示会は18日(火)~)に開催される。ぜひ、日本からも多くの方にご参加いただければ幸いである。
IPC APEXの模様
IPC国際標準化委員会の最新情報
IPC-A-610/J-STD-001 合同タスクグループ会議
- 週末(6日(土)・7日(日))の開催にもかかわらず、世界各国から100名を超える参加者が会議に駆け付け、熱心な議論を行った。会場での参加を通じ、両業界規格が、広く開かれたフォーラムにて練り上げられた真のグローバル・スタンダードであり、多くの企業が信頼を寄せる所以が実感された。
- 会議の冒頭、両基準書の最新リビジョンとなるJ版について言及があり、委員長より、感謝が述べられた。同時に、J-STD-001にて参照されるコンフォーマル・コーティング内の気泡に関するホワイトペーパー(IPC-WP-028)も発行されている。本ホワイトペーパーは、日本語版の発行も合わせて予定している。
- 本会議では、持越しとなった提案の議論や、少人数のタスクグループ内検討有志(通称:A-Team)からの情報展開など、さっそく次版に向けた取り組みがスタート。次回の対面会議は、10月のIPC Builds(於:ノースカロライナ)にて開催される予定である。
IPC-A-610/J-STD-001 オートモーティブ追加規格委員会
- IPC-A-610/J-STD-001合同タスクグループ会議の内容を踏まえ、翌月曜日に開催された。日本の地域タスクグループ(7-31BV-JP)からは正副委員長が参加。既に採用となった日本(7-31BV-JP)発の提案事項もあるが、日本からの益々の参加、提案が期待される旨の激励もあった。
- 現状としてはJ-STD-001及びIPC-A-610の最新リビジョンの内容を精査する段階にあり、次回10月の対面会議までに最終ドラフトのレビュー段階(FDIR)を終えていることが、当面の目標となる。FDIRにて提出された意見を解決後、基準書発行に向けた投票フェーズへと移る。
- 次リビジョンでの検討事項に関するブレーンストーミングが行われ、はんだ被覆範囲の基準に関する包括的な表の作成や、スルーホールにおけるはんだ接合部内のボイドに関する基準新設などが議論された。関連して、ボイドに関するホワイトペーパー(IPC-WP-027)の発行準備が進んでいる。本ホワイトペーパーにおいても日本語の翻訳を行う予定である。
- その他、本委員会で議論および提出された書類を日本国内委員会にて共有し、議論および認識にすり合わせを行う予定である。日本の委員会グループ(7-31BV-JP)に参加を希望の方は、お問い合わせください。
IPC-6012リジッドプリント板 オートモティブ追加規格
- 米国のほか、欧州、インド、韓国といった国からの参加があり、本規格に対する国際的なニーズ、関心の高さが垣間見られた。日本からも7-31BV-JPの正副委員長が同席し、地域タスクグループの立ち上げに向けた意見交換も行われた。
- まずはタスクグループ内の各A-Teamより、試験方法や各種コーティング、ソルダマスク、高電圧といった個別の検討事項について最新の状況・情報が共有された後、更なる検討に向け参加者が募られた。続けて、提案されている意見について、順次検討された。
- 次リビジョンでの検討事項に関するブレーンストーミングが行われ、はんだ被覆範囲の基準に関する包括的な表の作成や、スルーホールにおけるはんだ接合部内のボイドに関する基準新設などが議論された。関連して、ボイドに関するホワイトペーパー(IPC-WP-027)の発行準備が進んでいる。本ホワイトペーパーにおいても日本語の翻訳を行う予定である。
- 大元となる基準書の最新リビジョン(IPC-6012F)は、先日リリースされており、準拠したオートモティブ追加規格(FA)も、早急な対応(出版)が求められている。今回の議論を踏まえ、IPC-6012FAの内容については、10月の対面会議での校了を目指すことが確認された。
- 本リジッドプリント板に関する日本委員会グループの立ち上げを予定している。日本グループに参加を希望の方は、お問い合わせください。
IPC-9716 (AOI Process Control Standard) タスクグループ会議
- 本会の正式スタートが2023年5月であったため、米国では対面参加の可能な初めての機会となり、会期最終盤の開催にも関わらず多数の出席があった。このような事情から、冒頭には、正副委員長より、本規格の意図や、AI(Automated Inspection: 自動検査)規格のシリーズ化(IPC-9710シリーズ)経緯などについて、改めて説明があった。
- AOI (Automated Optical Inspection)をはじめ、自動検査は、多くのエレクトロニクス製造工程において重要な役割を果たすが、確立した業界規格がない。自動検査工程をより有効に活用できれば、誤判定(欠陥の見逃し)を減らすことにつながる。
- IPC-9716は、プリント基板組立てに関するAOIの工程管理を扱う。今年の6月頃に規格案の回覧、秋口に投票を経て、年内の出版を目指す。
- 良否判定の基準は、おおよそIPC-A-610『電子組立品の許容基準』やIPC-7527『ソルダーペースト印刷に関する要求事項』など、既存のIPC規格に基づく予定である。
テクニカルカンファレンス / 基調講演など
テクニカルカンファレンス
- IPC APEX EXPOの目玉の一つであるテクニカル・カンファレンスには、エレクトロニクス製品の設計から製造まで、テーマに即した世界中の研究者・識者が招へいされる。本年は、9日(火)からの3日間で、10テーマ計30のセッションが開催され、いずれの会場でも、登壇者により、斬新な未発表データに基づく最新の知見が共有された。
- Factory of the Future – AI & Machine Learningのセッションでは、日本の地域タスクグループでも精力的に活動している株式会社クオルテックより植木氏が登壇し、同社のAI・ディープラーニングを活用したボイド画像分析技術について、披露した。フロアからは、検出位置(高さ)に関する指摘や、スルーホールのはんだ接合部への応用可能性といった質問も寄せられ、講演内容の有意性、関心の高さが窺われた。
- 各セッションにおける内容は、後にIPCの規格(の裏付けデータ)として採用されることもある。IPC会員になると、過去のカンファレンス資料アーカイブにアクセスすることできようになる(現在は、IPC APEX 2002 ~ EXPO 2023までの講演資料が確認できる)ため、ぜひ積極的に活用いただきたい。
IPC-9716 (AOI Process Control Standard) 基調講演など
- 会期中には、ゲストスピーカーを招いた講演会や授賞式、テーマ横断的な特別セッション等のイベントも催された。先に触れたベイリー氏の開会講演や、昼食講演会でのIPCプレジデント、ジョン・ミッチェルによるスピーチ『人的労働力の未来 ~自動化された世界における可能性の最大化~』等で通底していたのは、リスクの正しい把握と勝機を信じ挑戦することの重要性や、自動化によって得られる「時間」を最大限に活用すべしという視点であった。いつの時代にあっても、私たちは、技術に使われる側になってはならない。
- 授賞式では、IPCボードメンバーの一人であるである渡辺裕之氏(NEC)に対し、長年のIPC標準化活動への貢献を称え、IPCプレジデント賞が授与された。渡辺氏には日本のタスクグループでも勉強会の講師を務めていただくなどご尽力いただいている。関係者一同、この場を借りて御礼を申し上げるとともに、心からの賛辞を贈りたい。
- 『EVエレクトロニクス:設計、製造、信頼性の課題』は、本会最後となる特別セッションながら満員御礼となった。各国・地域政府の思惑はどうあれ、欧・米・中から参加した、いわゆる「自動車業界」に身を置くパネリストたちとって、EV(ないしe-Mobility)こそが“Next Becomes Now”である。高電圧を想定した設計、あるいは新材料や接合方法などが紹介されたが、いずれも高信頼性の担保に課題を抱えており、地道な検証の積み重ねが必要性であることが印象付けられた。
各国IPCの活動状況
- IPCは、米国・イリノイ州に本部があるが、世界中でエレクトロニクス業界の発展を支えている。本展にも、ヨーロッパやインドのほか、IPC Asiaからは、中国、台湾、韓国、東南アジア(タイ、マレーシア、ヴェトナムなど)、そして日本の担当者が集結し、各国からの参加者とのコミュニケーションやサポートに勤しんだ。
- 昨年、日本でもサービスを開始したIPCの監査プログラムだが、各国担当からの情報によれば、特にアジア太平洋地域を中心に、IPCの監査サービスへ非常に高い関心が寄せられている。一方で、工場認証の際には、対象となる諸規格への正しい理解、現場での適切な運用が求められることから、資格認証トレーニングの有用性が改めて確認された。
- IPCのインターナショナルアップデートとして、IPCインド、メキシコ、ヨーロッパの代表が登壇するセッションも開催された。それぞれに活動開始時期は異なるが、総じて現地担当者によりきめ細やかなサポートが可能となり、トレーニングセンターの強化や、地域発の規格開発会議の設置など、規格の理解促進と活用、発展段階へとダイナミックな移行期にあることが紹介された。
資料ダウンロード
これまでに日本語に翻訳されている主要なIPC標準規格の無料版やトヨタ自動車、オムロン、アドバンテスト、GMなど各社がIPCを導入した理由や効果などの事例インタビューを入手可能です。