
IPC APEX 2025の最新情報を速報! 標準化委員会、技術論文発表、製品展示会など
2025年3月24日

IPC国際標準化会議およびApex2025開催レポート
このほど、2025年3月15日(土)~20日(木)のあいだ、“Reimagine the Possibilities”(「新たな可能性を描く」)をスローガンに掲げ、エレクトロニクス業界における北米最大のイベントであるIPC APEX EXPOが開催された。「AIの概念と応用」や「アドバンスドパッケージング」、「ウルトラHDI」といったテーマが本イベントに通底しており、昨年に引き続き会場となったカルフォルニア州のアナハイム・コンベンションセンターは多くのエンジニアや専門家、産業従事者などで賑わった。
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これまでに日本語に翻訳されている主要なIPC標準規格の無料版やトヨタ自動車、オムロン、アドバンテスト、GMなど各社がIPCを導入した理由や効果などの事例インタビューを入手可能です。
IPC Apex 概要
IPC APEX EXPO 2025
IPC最大の祭典であるIPC APEX EXPOは、エレクトロニクス業界関係者にとって世界クラスの製品展示会であると同時に、最新技術や専門性に磨きをかける学びの場でもあり、また、イベント参加者とのネットワーキングの絶好の機会ともなる。
展示会は「生成AIの父」として知られ、シリコンバレーの破壊的イノベーターであるケビン・スレイス氏の基調講演『AI、自動化、そしてデジタル変革』を皮切りに3月18日(火)より開幕した。他方、規格開発のための対面会議やテクニカル・カンファレンスは、先立つ週末よりスタートしており、全てのイベントが会期最終日の20日(木)午後まで精力的に続けられた。
近年のIPC APEX EXPOは、展示会にとどまらず、最新技術や専門性に磨きをかける学びの場や、参加者とのネットワーキングの機会も提供しており、まさに「IPCらしさ」を体現する複合イベントとなっている。会期中は好天にも恵まれ、北米はもちろん、ヨーロッパやインド、日本をはじめとするアジア諸国からの参加者も目立ち、25回記念の開催に相応しい賑わいを見せた。




主なIPC標準化活動のアップデート IPC-A-610/J-STD-001関連
IPC-A-610/J-STD-001 合同タスクグループ会議
- 週末(6日(土)・7日(日))の開催にもかかわらず、世界各国から100名を超える参加者が会議に駆け付け、熱心な議論を行った。会場での参加を通じ、両業界規格が、広く開かれたフォーラムにて練り上げられた真のグローバル・スタンダードであり、多くの企業が信頼を寄せる所以が実感された。
- 現行の最新版であるリビジョンJが日本語訳版を含め昨年リリース済みであり、改訂K版に向けた検討がはじまっている。国内タスクグループでの議論を経て周到に準備されたトヨタ自動車株式会社からの提案も取り上げられ、有志の少人数チーム(通称:A-Team)での継続審議が決まった。このようにIPC規格は開発の段階からグローバルに議論され、世界中のエレクトロニクス企業より市民権を得るに至っている。
- 本会議では、持越しとなった提案の議論や、少人数のタスクグループ内検討有志(通称:A-Team)からの情報展開など、さっそく次版に向けた取り組みがスタート。次回の対面会議は、10月のIPC Builds(於:ノースカロライナ)にて開催される予定である。


IPC-A-610/J-STD-001 オートモーティブ追加規格 タスクグループ会議
- 主に改版前の最終ドラフトへの指摘事項を確認するため、30名ほどが参加した。IPCの標準化プロセスでは、地道な作業ではあるが、細かい文言修正に関しても個々に決を採りながら確認が進める。日本の地域タスクグループからも正副チェアなどが現地にて議事に参加した。
- 大よその技術的な指摘事項は会議にて解消され、今後は、最終投票などの承認プロセスを経て、本J-STD-001及びIPC-A-610に対応するオートモティブ追加規格の次版(001/610“J” A)が出版となる。順調にいけば、9月前後に原著(英語)版のリリースが見込まれている。
- 会議の後半には、次々版(001/610“K” A)に向け新たに日本で議論されている提案についても、紹介があった。改訂“J” A版では既に日本のタスクグループ[7-31BV-JP]からの提案も採用される見込みとなっている。IPC規格は開発段階から国・地域の枠を超えた意見が集約されるグローバルな業界規格と言え、いわゆる国際規格の開発プロセスとは大きく異にしている。


主なIPC標準化活動のアップデート IPC-6012/IPC-9716関連
IPC-6012 オートモティブ追加規格 タスクグループ会議
- IPC-6012“F”に対応したリビジョン“F”Aの最終ドラフト校了に向け、15名ほどの委員が集まり、議論を行った。最終ドラフトの公開に向けた準備は大よそ整っており、A-Teamより提案されていたマイクロビアに関する追加基準などは、試験結果の取得に時間がかかる等の理由から、次期リビジョン(“G”A)での反映を目指すことで参加者の意見が一致した。
- 同じく改訂“G”A版での採用を目指すことになった高電圧に関する基準(ないし、関連の試験方法)については、ボッシュ社のローター・ヘネケン博士より、同日のテクニカル・カンファレンスにて発表のあった内容について共有があった。このように、カンファレンスで公表された研究成果が、IPCの規格(の裏付け)として採用されることは少なくない。同カンファレンスへの参加や論文集は基本的に有料であるため、委員会への参加メリットの一つとも言える。
- 昨年より、本タスクグループ[D-33AA]に紐づく日本TG[D-33AA-JP]が立ち上がっている。日本TGのチェアも現地にて参加し、会議参加者などと交流を深めた。関係者からは、今後の議論に際し、日本からの提案や意見にも大いに期待したいとのフィードバックがあった。
IPC-9716 (AOI Process Control Standard) タスクグループ会議
- AOIをはじめとする自動検査(Automated Inspection)は長らく業界規格が不在だった。IPCではプロセス管理を主眼とした自動検査規格をIPC-9710シリーズとして展開していく予定である。既に議論がスタートしているICサブストレートを対象としたIPC-9712に加え、一般要件を定めるIPC-9711やHDIを含むプリント基板を対象とするIPC-9714など、順次議論を開始する。
- 本タスクグループで開発するIPC-9716では、AOIによるプリント基板組立の品質と信頼性の確保を主題としている。初版は年初にリリース済みで、既に改訂A版に向けた議論がスタートしている。例えば、プリント基板組立向けのAXI(自動X線検査)、SPI(はんだ印刷検査)への可能性など、特定の要件追加に向けた案がある。
- このほか、自動検査の活用対象の幅広さからシリーズ内での重複・取りこぼしがないよう、多彩な業界から集まった25名程の参加者がブレインストーミングを行った。また、先日、IPCよりAOIにおけるAI(人工知能)活用に関するホワイトペーパーが刊行されているが、AI活用も重要なポイントになってくるとの認識が共有された。


テクニカルカンファレンス / 基調講演
テクニカルカンファレンス
- IPC APEX EXPOの目玉の一つであるテクニカル・カンファレンスには、エレクトロニクス製品の設計から製造まで、テーマに即した世界中の研究者や有識者が招へいされる。会期中に10テーマ計30のセッションが開催され、未公開データを含む最新の知見や斬新な意見が共有された。
- 本年の最優秀論文には、ボッシュ 社のローター・ヘネケン博士による『高電圧温湿度バイアステストによるプリント基板外層電子材料の評価』が選出された。eモビリティ化に伴い、ECUなどは最大1250Vもの高電圧下での動作が求められ、100V以下を前提としていた従来の(IPC-2221、IEC 60664-1などの)試験では、適切な評価が得られない。テストクーポンを新たに設計し行ったラウンドロビン試験の実証結果を踏まえ、推奨される試験方法や設計指針が提示された。
- 「Power Electronics」のセッションでは、日本の地域タスクグループでも精力的に活動する太陽インキ製造株式会社より、日本シイエムケイ株式会社との共同研究である『高熱伝導率・高絶縁信頼性を備えた新規材料を用いたPCBの放熱性能の実証結果』が披露された。本セッションは100名を超えて収容可能な大会場にて開催され、関心の高さが窺えた。なお、IPC会員企業には、過去20年超のカンファレンス資料アーカイブに無料でアクセスできる特典が付与される。


基調講演など
- 会期中には、ゲストスピーカーを招いた講演会や授賞式、テーマ横断的な特別セッション等のイベントも催された。先に触れた基調講演にてスレイス氏は、随所にユーモアを散りばめつつ、「情熱を持って変化を受け入れましょう」と聴衆を魅了し、生産性の向上や労働力不足への対応、そして創造力を無限に深化させるAIの変革力について語った。
- IPCプレジデント、ジョン・W・ミッチェルによるスピーチ『エレクトロニクス~グローバル経済を変革する資源~』では、グローバル経済を牽引するエレクトロニクス産業が直面するサプライチェーンや持続可能性、技術革新、人材戦略といった共通課題を掘り下げ、参加者の奮起も促した。
- 最終日には、高性能コンピューティング並びにAI/データセンター向け、及びEVパワーエレクトロニクス向け、計2セッションのアドバンスドパッケージングに関する特別講演が組まれた。分野を問わず、エレクトロニクスの進歩を享受するためには、アドバンスドパッケージングのコモディティ化は避けられない。IPCは本件に関する世界最大の、グローバルな産業インテリジェンスとして、引き続き規格化の促進や、各所との意見交換・情報発信を続けていく。


今後のスケジュール
- IPCは、本拠こそ米国・イリノイ州に置くが、世界中でエレクトロニクス業界の発展を支えている。IPC Globalのブースでは、IPC North Asiaからも中国・台湾や韓国、日本の担当者がアテンドするなど、世界各国からの来訪者で賑わっていた。
- IPC Builds(旧IPC Summer Com)は、APEXと並び、各国からの参加者が対面でIPCの標準化活動に参加し、意見交換を行える貴重な機会となっている。今秋は、昨年に引き続き米国にて開催予定となるが、2026年秋はヨーロッパでの開催を調整している。規格開発においては、欧州発のタスクグループも立ち上がるなど、欧州各国より積極的な参画が続いている。
- 次回のIPC APEX EXPO は、“transform TOMORROW TODAY”と銘打ち、2026年3月14日(土)~19日(木)(※展示会は17日(火)~)の日程で、本年同様、アナハイム・コンベンションセンターにて開催される。2027年も4月に、同所での開催を予定している。




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これまでに日本語に翻訳されている主要なIPC標準規格の無料版やトヨタ自動車、オムロン、アドバンテスト、GMなど各社がIPCを導入した理由や効果などの事例インタビューを入手可能です。
参考動画

今さら聞けないIPCの基本 〜IPC-A-610/J-STD-001の内容について〜

IPCとは?「エレクトロニクス産業の国際基準IPCの基本が分かる!」

今さら聞けない、国際規格の話 「IECとIPCの違い、説明できますか?」
